ビジュアル・コミニュケーション・ラボ ...制作から発表まで
斎藤 美奈子
ビジュアル・コミュニケーション・ラボ / 講師:斎藤美奈子
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皆藤 まずは「ビジュアル・コミュケーション・ラボ」という講座名についてお伺いしていきたいと思います。「ビジュアル・コミュケーション・ラボ」は、美学校の枠組みですと、「現代メディアトレーニングA」という枠組みに入っています。そこの枠組みに入っている講座はユニークなものばかりで、例えば「ヨレヨレアート」ですとか「超・日本・アヴァンギャルド論」等がありますが、「ビジュアル・コミュケーション・ラボ」はこれらの講座名とは雰囲気が違って、カッコいいなと思わせるようなネーミングなんですけど(笑)なぜ「ビジュアル・コミュケーション・ラボ」という講座名になったのでしょう?
斎藤 実は、そんなに深い理由があって付けたのではないんだけど…(笑)。まず、ものを作るっていうことを、視覚でコミュニケーションを取るための、まあ、一つの手段と考えて。美術を通して社会と関わるための「訓練講座」のような、そんな位置付けのものを想定してつけたんです。
皆藤 視覚芸術を通して社会と繋がっていくための、という意味を込めて「ビジュアル・コミュケーション・ラボ」と。
斎藤 そうなんです。社会だけじゃなくて、もちろん隣の人ともっていうことですけど。
皆藤 そういう広い意味でのコミュニケーション。社会だけでなくて、人も含めて。
斎藤 そうですね。
皆藤 それと美学校のパンフレットにも講座内容というのが書かれているのですが、具体的に授業ではどのようなことをなさっているのでしょうか?基本的には、作品制作、つまり構想から出発して作品を作って、どのように発表していくか、という授業だと思うのですが、具体的にどういう風に進めていくのでしょうか?
斎藤 私のクラスは、これは美学校の良いところで、他のクラスも大方そうですけど、小人数制です。カリキュラムをだいたいは作ってありますけど、ひとりひとりに合わせて進めていくことを基本としています。カリキュラムに添って1ステップ、2ステップ、3ステップ目があって、完結、修了!みたいな進め方ではないということです。受講生と話し合いながら進めていくという感じです。
皆藤 基本的には受講生がどういうものを作りたいのか、というのをサポートしていくと言いますか。話しながら一対一で、という感じでしょうか?
斎藤 そうです。これまでも、絵を描いている人もいれば、ドローイングばかりをしている人、立体を作っている人、ビデオだったり、あるいは写真を撮っている、インスタレーションをやっているとか、いろいろなケースがありました。ただそれは表現の手法であって、どういう手法をとっていてもいい。手法にとらわれず、一年かけて自己表現ができるように、一年だと実際にはなかなか難しいんだけど、自己表現するための糸口だけでもまずつかまえる、というようなことが主な目標ですね。
皆藤 YさんとTさんの修了展は一昨年でしたっけ?美学校でやった。
斎藤 泥を使った作品と、天井から布を吊るしたインスタレーションでしたね。
皆藤 その時の授業はどんな授業をされていたんでしょう?
斎藤 Yさんは絵も描くし、立体も作る人で、でも絵というのが、なんていうかな、触覚的な要素が強い絵で。体感できるようなものが、彼女の感覚に合うのかなという印象を最初から持っていました。立体も作ってみたいという話が出て、最初に彼女が作ったのが哺乳瓶のくわえるところ、つまりおしゃぶり。で、おしゃぶりを沢山作り始めたのね。「おしゃぶり気にいってるんです」(笑)って言って。それで、おしゃぶりをどうしたいのかと聞くと、おしゃぶりを沢山作って、サラリーマンみたいなスーツを着た男の人にくわえさせて、それでパフォーマンスをしたり、それを映像にしたりしたいって言っていましたね。その頃、絵も同時に描いていたんですけど、どちらか片方だけに限定するのではなく、絵を描いたり、ぐちゃぐちゃと立体を作ったりということを交互にやりながら、最終的に土を使って何かしたいというところへ発展していってました。で、美学校の隣の公園で穴を掘り出して(笑)。
皆藤 (笑)
斎藤 土はどうしようか?って聞くので、隣で掘ってくれば?って言ったら、バケツ持って穴堀りに行ってましたね。それで、水と混ぜてくちゃくちゃ粘土を作りだしたんです。でもそのうち、あんまり掘ってると怪しまれるんじゃないかっていう話になって、ん〜そうだねぇ、じゃあ人が居ないときに掘るしかないかって…(笑)。こんなことを授業中に真面目にやっているわけなんです。
皆藤 (笑)
斎藤 そのうち、パフォーマンスとかじゃなくて、それをもっと大きなものにしたいと彼女が言い出して、最終的には、ショベルカーを使って千葉の方から大量の土を運んで作品にすることになったわけです。
皆藤 お父さんと(笑)。
斎藤 お父さん、おじさん、近所の知り合いとか、みなさんに手伝ってもらって作品にしたという感じでしょうか。私のクラスでは、ある程度はもちろんアドバイスしますけど、ああせいこうせいと言うような、具体的な助言は最小限になるように気をつけています。ついつい、あれこれ言っちゃうんだけどね(笑)。
皆藤 ではその人が持っている可能性みたいなものを、こっちがいいんじゃない?と言うのではなく、その人に探らせていくという感じでしょうか?
斎藤 そうですね。さっきのYさんの話でいうと、最初はおしゃぶりだった。けれどもおしゃぶりの案が生まれ、おしゃぶりを作ってみて、すぐそこからおしゃぶりの次が見えるような形を私が引き出すと、ああいう修了展の作品には、たぶんならなかったと思います。おしゃぶりを作って、次に絵も描いて、で、またおしゃぶりがもっと大きくなったようなものも作って、という過程の中でインスタレーションになっていったのだと思います。

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